ザスパクサツ群馬は2017明治安田生命J2リーグ 第37節・東京ヴェルディ戦で敗れたことで、最終順位が降格圏以内となることが確定した。
ザスパクサツ群馬が2017シーズンであげた勝利数はわずか5勝(第37節終了時点)。
なぜここまで勝てないシーズンとなってしまったのか?
さまざまな問題点が指摘されているが、今回は試合を通じて感じたことを自分の言葉で書きたいと思う。
情報は試合を通じてと、試合後のコメントなどでしか得られていないので事実と異なる表記はあるかもしれない。
ここ最近の菅原GM問題とは切り離してザスパクサツ群馬が降格の危機に瀕するまでなぜ勝てないのか?を紐解きたいと思います。
チームを大幅に刷新して臨んだ森下監督体制
2017シーズンは、前任の服部監督を解任して森下監督が就任し、瀬川祐輔や中村駿ら主力選手を含めて大幅に入れ替えた。
これは毎年続く残留争いからの脱却を目指しての大ナタとなった。
その中でも見え隠れしたのが財政的な苦しさ。
瀬川は仕方ないにしても中村駿や乾大知は明らかに年棒争いに敗れた形で移籍された。
そんな状態だからこそ、大卒の即戦力新人を多く獲得し、その中でもプロ契約出来ずにアマチュア契約での獲得も多くなった。
アマチュア契約が増えたことはプロサッカークラブでは珍しいというか前代未聞で、苦肉の策を取らなくてはいけない事が、どれだけチーム編成が進まないかお分かりいただけるだろう。
大学屈指のストライカーだった高井和馬や出岡大輝ら粒ぞろいの新人を揃えたことは当時は賞賛された。
高井和馬はJ1クラブからもオファーがあったのにザスパクサツ群馬を選んでくれたことで特に期待感が高まった。
大宮アルディージャからレンタル中でレギュラーだった清水慶記と高瀬優孝をレンタル期間延長や他クラブからも岡田翔平や阿部巧など実績のある選手も加入し、選手編成はうまくいったかに見えた。
シーズン開幕から振り返る
まずは簡単ではありますがシーズン開幕から守備と攻撃面で振り返ってみます。
攻撃の形が見えないシーズン
森下監督の色が出たのが攻撃面に関しての方が大きかったのかもしれない。
驚いたのが攻撃的な選手のボランチ起用。山岸祐也をボランチで起用したのだ。
森下監督は初めから攻撃面での圧力不足を感じていたのではないだろうか?
ボランチに山岸を置くことで前線の選手たちをボランチからバックアップし、攻撃の圧を高めたいと考えたのだろう。
これは結果的に失敗で山岸の良さも消しながらボランチがスペースを開ける結果となり、守備の崩壊を助長した。
失敗と書いたが、攻撃力を高める苦肉の策がボランチの攻撃参加でこれしかなかったのが森下監督の気持ちなのかなと思う。
それだけ攻撃的な選手の迫力やアイディアは無かった。
高橋駿太をウイングバックで起用したことも、明らかな攻撃の圧が不足する中で森下監督の苦肉の策第2弾だった。
攻撃的な選手をウィングバックに使えば、裏を狙われることは想像していただろう。
それでも攻撃にウエイトをおかないといけなかったのは、ゴールを奪わないと勝てないからだった。
前線ではタメを作る選手が不足し、相手陣内に入ることすら難しい状態が続いた。
パスの精度を欠き、足元へのパスが多くなったことでパスコースは限定された。
そんな中、一人の選手が劇的な変化を生む。
カンスイルの登場だ。
カンスイルが生み出したザスパの攻撃パワー
カンスイルの良さはリズムを変えられることだろう。
ボールをキープすることでタメを作ったり、裏のスペースへ抜けて攻撃をスピードアップさせることも出来た。
これまでザスパの攻撃陣に必要だった攻撃の変化を生み出した。
基本技術に加えてスペースを見つける臭覚などストライカーとして飛びぬけた能力を証明して見せた。
J2では反則級の怖さを見せつけ、奇跡の3連勝を達成する。
カンスイルの登場は相手クラブの脅威となり、次第にマークが厳しくなると同時に怪我もあり出場機会は限定されたことはザスパにとって非常に痛手となった。
前述したように攻撃のリズムを生み出すだけでなくフィニッシャーとしても高い能力を見せる選手は他にはいなかったからだ。
ストライカーとしての高井和馬
エースとして期待された高井和馬は前半戦こそ8ゴールをあげて活躍したが、後半戦では厳しいマークにも苦しみベンチ外やベンチメンバとなって苦しいシーズンを送った。
カンスイルが攻撃をけん引する中で、開幕前は高井がその役割を発揮すると思っていた。
フィニッシャーとしては高い能力を見せたけど、カンスイルのように攻撃の変化や組み立てる部分では貢献できなかった。
江坂や瀬川と比較され、新人1年目の選手がエースとしての重圧も背負わされるチーム事情も本当に申し訳ないと思うが、高井のプレーにはそれをも跳ね返せる可能性はあった。
献身性や守備面での課題はあるが、ゴールを決めるチカラは見せただけに2年目はもっと飛躍しそうだ(それがザスパである可能性は低そう)
後に原因は書くとして、シーズンを通してこれという攻撃の形が作れなかった事が、守備の安定化を邪魔していたことはたしかだろう。
3バックから4バックへ変更しても守備の崩壊は止まらない
新体制に夢が膨らんだ2017シーズン開幕だったが、守備の不安定さから採用された3バックが選手にフィットせずに4失点で崩壊。
その後も無失点で試合を終えることが出来ずに、初勝利を上げるまでに第12節ロアッソ熊本戦まで待たなくてはいけない事態になった。
当時は新たに採用した3-4-3がうまく機能していないことが守備崩壊につながっていると思っていたけど、そうではないことに後に気づくことになる。
夏の移籍期間にヨソンへを獲得したことで、森下監督は第24節ロアッソ熊本戦から4バックに変更。4-4-2のフォーメーションを採用した。
これで守備は安定するかに思われたが、それでも失点は止まることなくその後も失点を繰り返し、無失点試合は9月のジェフユナイテッド千葉戦のみとなっている。
マークに付き切れないセンターバック
守備の崩壊に大きく起因したことは、ゴール前でマークを離す守備陣。
当初DFリーダーと期待された川岸祐輔は、高い身体能力の発揮とラインコントロールを託された。
ラインコントロールに尽力する中でゴール前でのマンマークはおろそかになっていた。
特にサイドからのクロスへの対応ではボールウオッチャーになることもあり相手を捕まえ切れなかった。
次第に出場機会を失った川岸祐輔に変わってパクゴンやチェジュンギら韓国人DFを起用。
強い対人能力を期待されたが、彼らもクロスへの対応に弱さを見せた。
全ての失点原因がDFだけではない。
前述したようにボランチをより攻撃的に配置する中で、ボランチがいるべきスペースを使われることと、そこにいる相手チームの選手をセンターバックがカバーしなければいけない状態が続いたことで、結果的にペナルティーエリア内でフリーな選手を作ることになった。
マークがズレるとよく言われますが今年のザスパはこれが常態的に起きていた。
松下裕樹がボランチに入った時にはバランスをとっていたが全てをカバーすることは例え松下でも無理だった。
シーズンオフに攻守で高い能力を示した中村駿の移籍と、マンマークに定評のあった乾大知の移籍は結果として大きな戦力ダウンとなっていった。
チーム強化の無政策がチームを弱体化した
ここまで2017年のチームの状態を攻撃面や守備面で書いてきたが、そこまでに至るクラブとしてのチーム強化や組織的な部分でも書いてみたい。
一番最初に菅原GMの問題とは切り離してと書きましたが、チーム強化の部分ではGMとは切り離せないのでここでは菅原GMについて書きたいと思います。
菅原GMがチームの強化を統括してきたが思うようには運営できていなかったことは明らかだ。
瀬川や中村駿らチームの中心選手を失い、その代役を上手く獲得できないことで、ザスパのチーム戦力は大きく低下していった。
高井和馬のような素晴らしい選手も獲得したが、それを生かせるようなチーム編成にできなくては宝の持ち腐れだ。
ビジョン無きチーム編成
チーム編成の部分で、森下監督のやりたいサッカーであったり、ザスパクサツ群馬のチームコンセプトにあった選手を獲得できていないように思えた。
個々の選手は素晴らしいが、必要な人材がいなければチーム力は上がっていかない。
資金力での部分からだろうが、人数合わせで獲得して言った感が否めない。
2017年にザスパクサツ群馬が勝てなくなった原因はそこで、攻撃や守備においての中心選手が不在で軸が出来なかったことが大きな原因だ。
中心選手は決して優れた選手でなくても良いが、チームの中心となりチームに良い影響力を与えるような選手だ。
ザスパクサツ群馬の過去を見ても、守備と攻撃において中心となる選手は必ずいた。
何度も書くけど、2017年は優れた選手はいたが中心となれる選手はいなかった。
菅原GMが生んだ無駄な軋轢
菅原GMのクラブに対する姿勢がサポーターから疑問視されたことでサポーターとチームに無駄な軋轢を生んだこともGMとしての資質を疑う。
クラブに対して愛情があれば生まれることのなかった、サポーターからの疑念を生んでしまったからだ。
チーム編成の失策、クラブの信用低下などクラブ強化の責任者として責任を果たしたとは言えない。
ただ、ザスパクサツ群馬の資金力や人材の少なさなど彼一人ではどうすることもできない難しさもあったと思う(若干のフォロー)
その責任を取り、ザスパクサツ群馬の社長と共に菅原GMも2017年で退任となった。
今後はチーム強化の基本理念をしっかりと持ち、それにあった選手の獲得でザスパクサツ群馬のチーム強化につなげてもらいたい。
まとめ
ここまで長々と2017年のザスパクサツ群馬について書いてきましたが、最後まで読んで頂いてありがとうございました。
ザスパクサツ群馬の最終戦が終わった後から書き始めたこの記事ですが、いろいろと修正しながら書いていたので遅れに遅れてこの時期の公開となってしまいました。
シーズンを通してザスパクサツ群馬のホーム戦はスタジアムでアウェーの試合(DAZN)を全て見ましたが、胸を張って俺がチームの中心だという選手がいませんでした。
誰もが自己中心的になれとは言いませんが、俺についてこいというリーダーシップは時として必要なんだと思いました。
山岸祐也がキャプテンでいるじゃないかという批判を受けそうですが、彼はそういうタイプではないと個人的には思っています。
瀬川のような中心選手がいた時に相乗効果で、山岸も輝くのかなと思います。
最終戦でのセレモニーで山岸祐也の挨拶を聞いた時に、こちらが想像する以上の重圧が彼を苦しめていたんだなと思いました。
でも挑戦することで成長できると思いますし、2018年ではこの悔しさをきっとチカラに変えてくれると思います。
2017年は非常に苦しいシーズンで辛かったです。
ブログ運営も途中で頓挫してしまい申し訳ありませんでした。
2018年は、こんどこそシーズンを通して試合レポートを書けるように頑張りたいと思います。